• 印象に残った経験をされた司法書士様の
    体験談をご紹介いたします。


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  • 篠原 康史 様
  • 『まちの司法書士事務所』
  • ■開業地:神奈川県海老名市 ■合格年度:平成22年度 ■開業年度:平成24年度
  • 締め切り3分前に飛び込み申請
    今だから笑える大騒動
  • 早速ですが、これまで先生が携わった案件で一番印象に残っていることを
    教えてください。
  • あれは開業して1年ほどだったかな。お付き合いのある大きい建売業者さん絡みの決済があって、オンラインで申請しようとしたんです。当時は半ラインが始まるかどうかくらいの頃。普段だったら書面申請してたんでしょうけど、そのときはトータルの移動距離が結構あったので、試しにオンライン申請をしてみようと思ったんです。書面申請より時間的な余裕もありそうだし、仮に何かあってもその場合は持ち込みに切り替えれば間に合うだろうと。

    11時に神奈川県北部の相模原で決済が終わり、14時に神奈川県南部の茅ヶ崎に抹消書類の受け取りに行って、15時には海老名の事務所に戻ってきました。15時半頃には申請しようと思っていたんですが作成に手間取ってしまって、何とかオンライン申請の準備ができたのが16時。それでいざ申請しようとしたらエラーになってしまったんです。当時は法務省が提供している無料の登記申請書作成支援ソフト(現:申請用総合ソフト)を使用していたんですが、マニュアル通りにやっているはずなのにどうしてエラーが起きたのか全然原因がわからない。何とか16時15分頃までは粘ってみたけれど、何も解決せず、いよいよこれは持ち込むしかないと書面申請に切り替えて大急ぎで準備したんです。

    神奈川県中央部の海老名から申請先の相模原の法務局へは、車でだいたい40分~45分かかるんですよ。高速に乗れば早く着くかもしれないけれど、それまで高速で行ったことがなかったし、良かれと思って初めて使った高速で迷ったり渋滞していたらまずいなと。そこで「よし、原付で行こう」と決めたんです。とはいえ原付でも結構な距離ですから、すごく焦りながら「あっちじゃない」「こっちじゃない」と走りに走って、やっと法務局に着いたのがギリギリの受付締切3分前。書類が揃ってないので後日補完しに来ますと伝えて、どうにかこうにか受付はしてもらえました。そのときはもう、間に合って本当によかった…という安心の中、ぐったりしちゃいましたね。ですが、そのままゆっくりもできなくて、司法書士会の委員会がその後あったので、近くの駐車場に原付を置いて、電車で横浜に向かいました。で、終わった後の22時頃に原付を取りにまた戻ってきて、やっとこさ家まで帰ろうと走り出した瞬間、プスンってガス欠で原付が止まっちゃったんです。「まったく散々な一日だな…」と思いながら近くのガソリンスタンドまで原付を押しながら歩いていたんですが、そこでハッと気づいたんですよね。

    もし原付に入っていたガソリンが少しでも足らなかったら、どこかで道を間違えていたら、少しでも遠回りしていたら、ガス欠で法務局にたどり着けず受付締切時間に間に合わなかったんだと。今となっては笑い話ですが、もし間に合っていなかったら、きっとその建売業者さんとは取引停止になっていたでしょうね。そうなっていた可能性が頭の中でぐるぐる回っちゃって、危なかった、本当に危なかった…、って過呼吸になるかと思ったほどです。このことがきっかけで、そんなふうにオンライン申請直前でエラーが出たりだとか、何か自分で対処できないような困ったことがあった時に、きちんとサポートもしてくれる専用システムを導入しようと強く思ったんです。
  • それで数あるシステムから“権”をご導入いただいたんですね。
    ありがとうございます。それではその案件以降は順調にいってますか。
  • そうですね。おかげさまで(笑)業務処理は問題ないんですが、仕事の中身はその当時からだいぶ変わってきました。開業時はご縁のあった法人さんからの仕事ばかりで決済メインだったんです。重なった時は決済を外注したりしてやりくりしてました。実際、自分1人ならそれで十分やっていけたんでしょうけど、そういった仕事のやり方に不安を感じるようになったのは、怪我をして入院してしまった時ですね。

    フットサル大会で膝の靭帯を切ってしまって3週間くらい入院したんですよ。受けていた仕事は入院中でも人に頼んでなんとかなったんですが、急に業務が止まってしまったら法人さんからの仕事は大変ですよね。その時に怪我や病気で自分の身体が動けなくなったらどうしようもないなとつくづく思い、段々と仕事をシフトチェンジしていったんです。法人さんからの仕事だけでなく、色々な方針・ 方向転換をした時に自分自身で仕事をもらえるようにしておかないといけないと思いました。持続可能性ってやつですね。そこからは後見業務や相続にも力を入れ、研修を受けたり、ロータリーや色々な団体の青年部に入って知り合いを作っていきました。今は地域に根ざした事務所が目標です。
  • 事務所名も「まちの司法書士事務所」ですもんね。
    地域に根ざした事務所のために心がけていることはありますか。
  • 司法書士業も言ってみたらサービス業ですので、そういう意味ではまず話しやすさが第一で、お客様にご理解いただけるまでしっかりと説明をしたり、親身に悩みなどを聞くといったことを心がけています。そういうことを繰り返していると、今まで予想もしてなかったところからお仕事をもらえるようになってきました。あと、相談の時間制限をあまりしないようにしています。30分とか決めてしまうと相談者さんは思ったより話せない場合が多いので、最後まできちんと話を聞くようにしているんです。たとえば先日受けた相談では、相談者さんご自身が思い悩み、不眠にまでなっている状態でした。仕事としては契約を結べばおしまい、となるのかもしれませんが、どうしてそうなったのか、原因の解消が出来ないかと悩みに寄り添うかたちで話をしているとどうしても相談時間が長くなってしまう。でもそれで少しでも相談者さんの気持ちが軽くなるのならいいと思っているんです。このまちで暮らしていくときに、一番目の相談先として思い浮かべてもらえれば嬉しいですよね。これは社会貢献という側面もありますが、自分自身も得るものが大きいんです。

    開業時は「仕事をもらえるか」といった自分目線でしか世の中を見ていませんでしたが、いまは社会が醸成されていく中で「司法書士が何をしていくか」を見つけることが大切なんだと考えています。
  • 深いですね。最初のドタバタ劇とは全く違ったお話で(笑)
    先生にとって司法書士は天職なんでしょうね。
  • そこまでは考えたことないですが(笑)仕事をしていて、心から感謝されているのか、表面上お礼を言われただけなのかはなんとなくわかると思うんですけど、自分の取り組み方次第で、心から感謝される、泣いて喜んでくれる、というのはやはり嬉しいですね。先日の話ですが、相続の手続きで、生き別れた肉親と再会したというケースがありました。その場に来てくださいと言われ、まるでテレビの感動の再会のような場に同席したんです。なかなかそのような機会に巡り合えない中で、弁護士さんより司法書士の方がいいなと思う点は、司法書士は争いの場にいないため中立的な立場に立ちやすいことです。色々な人の様々な感情を一番間近で見れ、その上で自分が下す判断をすごく尊重してもらえるので、しっかり勉強して皆さんが困らないような形で提案できるとすごく意義があるし、嬉しいです。そういった場に立ち会うことで、仕事を超えた経験や学びにもなりますし、ありがたく感じます。いい仕事をしているかどうかって、私が上から評価するものではないんですよね。誰が欠けても成り立たない、いい仕事の場に、一つのピースとして参加させてもらっている、というのが正確な気がします。
  • それでは最後に、新規開業者に向けてアドバイスをお願いします。
  • 大事なことは、相談に軽はずみに答えを出さないということと、自分が相談できる先をちゃんと作っておくこと、ですかね。皆さん悩んでいるだけで、答えを出してほしいと思っていないこともあります。自分が何でも解決しようと思う必要はないので、相談者さんの悩みに寄り添い、そのうちの一部を自分が担える場合は業務として受ければいいですし、専門外のことはきちんとした人を紹介すべきです。ただそのためには、いい仲間が必要です。司法書士は近隣士業と付き合いが必要になってくるので、自分自身のいいチームを作っておくと何かあった時に気軽に相談ができ、少し無理をしても答えてくれます。こういう人がいる、紹介してくれた、ということが口コミになっていきます。今だから思えるんですが、大切なのは、目先のお金ではなく、そういう人とのお付き合いができるような取り組み方だということですね。


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