• 印象に残った経験をされた司法書士様の
    体験談をご紹介いたします。


  • 永田 康司 様
  • 『ハーベスト司法書士事務所』
  • ■開業地:千葉県松戸市 ■合格年度:平成26年度 ■開業年度:平成27年度
    ■ホームページ:https://harvest-shoshi.com/
  • 元不動産業の司法書士が語る不動産案件を扱うときの心構えとは
  • 永田先生はもともと不動産業をされていながら司法書士の資格を取られたと伺ったのですが、まずは司法書士を目指したきっかけやエピソードをお聞かせいただけますか。
  • もともと私の父親がリフォームや浄化槽を設置する会社を経営していたのですが、その父親から宅建士の資格を取ってこいと言われたので、不動産業でも始めるのかと思って言われたとおり宅建の勉強を始めたんです。1年目は身が入らなくて落ちてしまって2回目に受かったんですけど、特に家業で不動産業を始めることもなかったので、私自身は不動産会社で何社か勤めてたんです。
    それで特にやりたいこともなくて不動産業の仕事を続けていたんですけど、宅建の勉強をしていたときに宅建が取れたら司法書士も取れるよみたいなことを予備校で言われてその気になって。実際始めてみたら全然そんなことなくてちょっとイラっとしましたけど(笑)。でもせっかく始めたし続けてみようと思って4年くらいかけて司法書士資格を取りました。
  • 宅建で勉強する習慣がついたんですね。それでは本題ですが、先生が司法書士をやっていて印象に残っている案件はありますか?
  • これは司法書士ならよく遭遇する話だと思うんですけど、相続で誰も知らない親族がひょこっと出てくるケースは印象に残ってますね。もちろん再婚歴とかも聞きますけど、家族に秘密にしてることって結構ありますから。このあいだも、おばあさんが亡くなったケースで先にご長男が亡くなられててそのお子さん3人に相続するという話だったんですが、実はおばあさんは2回目の結婚だったみたいで…。後見業務もずっとやっていたのでご家族からいろんなお話も聞いていたのですが、誰一人そういうことは聞かされてなく、気づいてもいなかったということがありました。3人のお孫さんもびっくりですよね。知らない親戚が急に現れる!って。それでそうなると今度は分割協議に参加してもらうのか放棄するのかってなりますよね。あくまでこっちは交渉できないんで、どうしますかって聞くんですが、ほとんどの場合は面識もないし受け取る義理がないということで放棄されるケースがいまのところ多いんですけど、相続財産に家とかもあるとごねられるとちょっと大変ですし、こちらの思ってたとおりの金額じゃ終わらなくなりますから、相続時は本当に注意が必要ですね。

    だからいろんな人に、親が亡くなる前に再婚なのか子どもは他にいないのか念のため聞くように言ってますし、もちろん自分の父親にも聞いてます。ただ、父親は「いや、いない」とは言ってますけど、正直ふたを開けてみないと分からないです(笑)。
  • 家族でも言いたくないことってありますもんね。では話を変えて不動産業経験者だからこそ見える司法書士業ってありますか?
  • 不動産業経験者というより私自身不動産業もやっているので、後見とか相続関係やってると、もう1円にもならなくてむしろ持ってるだけで固定資産税とか管理費がかかるような別荘とか、家も建てられないような土地のような、いわゆる負動産と呼ばれているような土地なんかをどうにかできないかっていう相談を受けたりするんです。
    そういった場合こちらで引き受け手を探してお金を払ってもらって引き受けてもらうというケースが増えてきましたね。こういった、いらない土地の処分をどうするかはこれからますます増えてくると思いますよ。相続土地国庫帰属法も2023年4月からスタートしますけど、建物があると解体しないとだめとか、測量もきちんとしてないとだめとか、やっぱりそれなりに制限があるんですよね。お金を掛けて整備したら売れるような物件だったらさっさと売るんでしょうが、もう原野商法とかに引っかかったような山林とか、行こうと思っても行けないような山の中の土地とか、そういったのを受け取って欲しいけど、そういったのは難しい。そうなると、お金を払って誰かに受け取ってもらうというケースが流行ってくるかなと思いますね。
  • たしかに最近はそういった不(負)動産のマッチングサイトも増えてきていますし、お金も不動産ももらえるというのはニーズがあるかもしれませんね。
  • ただそういう場合にお金に困った人がお金をもらえるならということで不動産を受け取っても結局いつかは亡くなるじゃないですか。まぁ相続人がいればいいんですけど……うちで管理するよとか。でもそうでなければ結局そのまま放置されてしまって、最終的に国庫に帰属されると考えると一緒なんですよね。サイクルが先延ばしになるだけっていう。
    だから所有者不明土地もそうですけど、不動産についてはいろいろと考えさせられますよね。どうしたらみんなが幸せになれる方法なのか、それは僕がいますごく思っている部分です。
  • やっぱり不動産には思い入れがあるんですね。それではついでに、不動産業での印象的な出来事ってありますか?
  • そうですね、司法書士としては取り扱っていないのですが、不動産業のころは任売(任意売却)を結構やってたんですよ。裁判所で公告がでたらすぐに手紙出したり訪問したりして、それでまぁ怒鳴られてましたね(笑)。でもちゃんと話を聞いてくれたりすると悪い話じゃないねって興味を持ってくれるんです。よく喜ばれたのが引越し代が出ることですかね。引越先も探してくれて、さらにうまく引越し代まで捻出してもらうんで。だから競売になるより全然いいんです。競売になると「はい、明日出てってください」って急に言われたりとかがあるので、もう下手すれば強制執行ですから。だからその前に一応手放して売ったっていう、心理的にも「取られた」のではなく「売ったよ」って思えますもんね。
    他にも反社の人の話とか昔で言う占有屋の話とかはあるけど、さすがにここでは話せないかな。やっぱり不動産って動くお金が大きいので色んな人が関わろうとするんですよね。急に司法書士の話に戻りますけど、そういうことがあるかもという認識で不動産案件は取り組んでますもんね。
  • 不動産ってすごいんですね……
  • そうですね。司法書士でも、付き合う業者さんを間違えると危ないと思いますよ。もちろんほとんどが真面目な企業ですけど、中には…っていうのがありますからね。下請けみたいな感じで付き合ってしまうと飼い犬みたいに扱われちゃうかもしれないし。多分甘い話もあるかもしれないんで気をつけてほしいですね。司法書士資格を取る人は大体独立希望がある人が多いと思うので、せっかく独立したのに言いなりにはなってほしくないですから。
  • なかなか強烈なお話をいろいろ伺いましたが……最後に、いままでのお仕事を踏まえてこれから独立する先生や後輩司法書士へのアドバイスなどありますか?
  • 開業したら金融機関の営業に行く人が多いと思うんですけど、その時に担当の方から何かこれ入ってくれれば仕事あげますとか言われることもあると思うんです。でももらえる仕事はほとんどなかったりとか、下手したらその担当の方は1年とか半年でいなくなって、その人に成績だけ残して、担当が変わったら全く来ないなんてことはいくらでもあるっていうのはお伝えしたいですね。もちろん最初のつながりからどうやって仕事を増やしていくかが腕の見せ所ではありますが、そういうことがあるということはこれからの方たちに知っておいてもらいたいですね。


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