• 勤務司法書士のススメ

  • 現在、新規登録された司法書士の約70%が勤務という道を選び、
    多種多様な事務所に勤務されています。
    「どんな事務所が自分に合っているのか?」
    「勤務先でどんなことが勉強になるのか?」
    「やっぱりいつかは独立したい?」
    あなたが勤務先を選ぶときの参考になればと
    実際に勤務司法書士として働いている先輩司法書士にお話を聞いてきました。
  • インタビュー①
  •  司法書士法人勤務
  • 「早く独立したいなら、まずは法人で働こう」
    「長く働きたいなら法人で働こう」
  • 全国展開している司法書士法人に勤務されている2名の資格者に司法書士法人に勤務してよかったことや、大変なことをお話しいただきました。
  • 全国に支店を持つ司法書士法人に勤務されているAさん(勤務11年目)とBさん(勤務2年目)に、いまの勤務先を選んだ理由や独立開業に対する考えなど「勤務司法書士」についていろいろ伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  • Aさん
  • Bさん
  • よろしくお願いいたします。
     
  • では早速ですが、お二人が勤務先として今の事務所を選んだ理由を教えてください。
  • Aさん
  • もうだいぶ昔の話であんまり覚えてないですが(笑)書士会の求人を見ていて、弁護士さんとか税理士さんとかと一緒にやっている事務所で大きそうだなというのが一番の理由ですね。大きい事務所で仕事を覚えれば色んな業務ができるんじゃないかと思ったのがきっかけ。のはずです・・・。
     
  • Bさん
  • 私は売上とか案件数とかが伸びている勢いのある事務所に入りたいというのがあったんです。それは前に勤めていた会社(他業種)の影響があるんですけど、その会社は売り上げが落ち続けていて、どれだけ頑張っても売り上げが伸びなくて。今度は逆に伸びているところで働きたいなというところがあったんです。あとはAさんと同じで学べる仕事内容が多そうっていうのは大事なポイントでしたね。資格予備校で就職先紹介をやっていてそこでこの事務所を知ったんですけど。実は私、勤務先を決めるときに最終候補がここの他にもう一つあったんです。
  • Aさん
  • え!? そうなの? どうしてもウチに入りたいって思ってたのかと・・・
  • Bさん
  • (笑)もう一つは、小規模ですけどすごいアットホームな感じで、しかも自宅に近くて!働くにはすごくいい環境かなとも思ったんですが、結局色んなことが出来そうっていうポイントが勝りましたね。
     
  • お二人とも勤務先を選んだ理由は一緒だったんですね。色んな業務ができる環境を求めてといったところでしょうか。では実際に勤務してみて「よかったな」と思えるところや法人勤務のメリットと感じられるところはどこでしょう?
  • Aさん
  • メリットはやっぱり給料じゃないですかね。代表社員とか個人事業主の場合、取引先の業績や仕事の入り次第では自分の給料を止めざるを得ないこともあるわけじゃないですか。それに比べて安定して給料がもらえるというのは何よりも代えがたいですよね。独立して自分一人でやってたら司法書士としての仕事と経営の仕事を併せてやらなければいけません。でも法人勤務の場合は法人っていう防波堤があって、その防波堤のなかでしっかりと司法書士としての実力を発揮することができるんですよね。しかも社会保険とかの福利厚生や有給制度なども社労士の先生を入れてちゃんとやってるので、ワークライフバランスもしっかりとれてると思うんです。他の事務所に勤務している資格者から結構そのあたりが大変っていう話は聞きますからね。
  • Bさん
  • そうですね!福利厚生や有休は結構同期で話題に上ります!
  • Aさん
  • あと、司法書士の業務っていろいろあるわけじゃないですか?たとえば不動産の決済みたいに「はい10万円」ってすぐにキャッシュが入るような案件もあれば、相続や信託みたいにキャッシュ化できるまで利益が出るまで時間が掛かるような案件もありますよね。そういった場合も人数がいれば様々な業務を並行して進められるので、いろいろな業務を受託することができるし、経験を積むことができるっていうのはあると思います。
     
  • Bさん
  • 私もそうやって難しい案件とかたくさん受注できているところで、いろんな案件に携われているっていうのが、すごい勉強になってます。ここに入社を決めた理由が正に適っている感じですね。しかもいままで担当した決済の回数を考えても司法書士としての経験値を高めるという意味ではすごく効率がいいと思います。たくさんの場をこなすことでいろいろなお客様とお話しすることもできますしね。
    あと人数が多いところのよかった点として、割と休みの融通が付けやすいところも大きなポイントかなと思います。というのも、うちはまだ子供が小さいので、急に熱を出したりしてどうしても仕事を休まないといけない時も出てくるんです。そんなときも周りのみんながちゃんとフォローしてくれるっていうところがすごく助かってます。個人的にそこはとても大きいですね
     
  • お二人が考える法人勤務のよさを伝えていただいたところで、逆に法人で勤務することについてのデメリットやちょっと大変だなと思うところはありますか?
  • Bさん
  • 別に法人に限ったことではないのかもしれませんが、たとえばうちはネットバンク系の仕事が多いんですけど、設定や立会をすごい遠いところで行うケースも多いんですよね。地図を見て「ここ!?」みたいな(笑)そういうときはちょっと大変だなと。でも、たまに普段の生活圏外に行くのも気分的にリフレッシュができていいんですけどね。
    あと恥ずかしい話ですが大人数ならではの伝達ミスっていうのがあります。事務所によっては1人が最初から最後まで関わるかもしれませんが、うちでは案件をチームで対応してるんですね。書類回収は○○さん、金消は△△さん、決済はわたしということがあるんですが、ごくたまに決済の時に「え!? そんなこと聞いてない!!」みたいなことがあって。
  • Aさん
  • ええっ! まだそんなこと起きてるの!?
  • Bさん
  • ・・・はい。
     
  • えー、問題点が掘り起こせてよかったよかったということで...気を取り直してAさんが考えるデメリットって何かありますか?
  • Aさん
  • うーん。デメリットですか・・・。そうやって考えるとこれも給与というか雇用に関してですかね。司法書士が法人化できるようになってから14年経ちますが、組織として成熟しきれているかというとまだ未成熟な部分があるんですよ。たとえば終身雇用ですね。組織的にそういった仕組みが確立できているかというと正直まだできていないと思うんです。だから従業員・勤務司法書士として一生をまっとうするといったキャリアプランがなかなか見出しづらいかもといったところがデメリットなのかなと思います。これは法人・個人関係なく勤務司法書士の問題なのかもしれませんね。
    やっぱり人によっては司法書士という仕事はしたいけれども、自分のキャリアプランの中でリスクをとりたくないという考えの人もいると思うんです。どうしても事務所を開業するとなるとリスクも付いてきますからね。そういう人もきちんと将来的なライフプランが見えるようにしていく必要があるのかなと感じています。
     
  • Aさんは支店長というお立場もあって深く考えてらっしゃいますね! では次の話題に。冒頭で色んな業務ができる環境を求めてというお話をいただきましたが、実際に特殊な案件を担当されたりもしているんですか?
  • Bさん
  • 同期に比べて多種多様かっていうとまだそこまで幅広くはないですかね(汗)
  • Aさん
  • うちでは若い人には司法書士としての地力をつけるための案件を積極的にやってもらってますね。やっぱり業務として多いのは基本的な案件ですので。たださっきもあったように相当の数をこなしているので、たぶん決済で不測の事態が起きたとしてもしれっとこなしてしまうぐらいの力量は入社2年目ですでに身についていますよね。そういった意味での司法書士としての経験値は相当高まっていると思います。
     
  • 確かに経験値はかなり早いサイクルで高まりそうですね。それではちょっと答えづらいかもしれませんが、今後の司法書士生活において「独立開業」を含めてこうなりたいという想いってありますか?
  • Aさん
  • 席を外そうか?
  • Bさん
  • 大丈夫です(笑)正直この事務所に入った時は3,4年くらい働いて、どこか自宅の近くで開業出来たらいいなと考えてました。で、実際にここで勤務してみた今の考えとしては開業するよりもここで長く働けたらいいなと思ってます。というのも横に上司がいるからというのは関係なく、純粋に楽しく仕事が出来ているんです。ある程度、年齢が近い人が多くて、上司も年齢がそんなに離れているわけではないので話しやすいですし、なんか問題が起きてもフォローしてもらえるという安心感もあるので、本当に働きやすいなと。もちろんもっともっと先の将来のことは分からないですけどね(笑)
     
  • Aさん
  • 僕はここで10年働いてきたんですが、独立の意志って実はないんですね。なんでかな。って考えることはあるんですけど、Bさんのような一緒に仕事をしていく仲間がいてくれてるっていうところが大きいと思うんです。あと、うちの創業者が本当にすごいんですよ。憧れの創業者っていうとちょっと美化しすぎかな(笑)たまに神懸って見えるんですけど、そう思える人の近くで仕事ができるってすごく恵まれてると思うんです。正直うちを辞めて独立した資格者から一緒にやろうって誘われることって結構多いんです。実際にそうしたら面白そうかなと思うこともありますが、“この事務所で働く価値”を超えることってなかなかないと思うんです。大きなビジネスをしたい。専門性を高めたい。あれもやりたい。これもやりたい。ってやりたいことがたくさんあるんですが、ここだったらそれを叶えることができるって思うんですよね。ですから勤務先を探している方がいらっしゃれば、是非そう思える勤務先と巡り合えるように頑張ってほしいですね。
     
  • 何かとても恵まれてるように見えますが、そう思えるのもAさんの努力の賜物なんでしょうね。では、最後に勤務先をどうしようか考えている方に向けてメッセージをお願いいたします。
  • Aさん
  • 「とっとと独立したいんなら、まずは法人で働こう」、「長く働きたいなら法人で働こう」、僕が言いたいのはこの2点です。なんせ案件をこなす量が全然違いますからね。勤務先の事務所によっては資格者なのにお使い程度の仕事しかさせてもらえないような話もよく聞きますけど、いろんなことにタッチして、実際に生のお客様の声を聞くっていうのがとても大事なことだと思うんです。たとえば借換するお客様ってこういうこと求めているんだね。っていうところにいち早く触れることが出来る。僕らにお金をくれるお客様もそこをご紹介してくれるお客様もそう。でも、それぞれのお客様のニーズがわからないまま独立するってなかなか勇気のいることだと思うんです。もちろん独立してからお客様の声を聞いてニーズを探ってというのも可能ではありますけど、近道ではないですよね。だから早く独立して成功したいのであれば、法人で働いてからのほうがいいんじゃないかなと思ってるんです。我々は法人で勤務しているので法人を推しますけど、もちろん個人でもきちんとやっている事務所もあります。そういう先生の話も聞いています。ですので、法人・個人問わず案件の多いところがいいんじゃないかと僕は思うんです。冒頭Bさんが言っていたように勢いのあるところで働いた方が絶対おすすめです。さきほどの繰り返しになりますが、是非自分の夢が叶えられるような勤務先を見つけられるように頑張ってください!
     
  • ありがとうございました。今回は司法書士法人に勤務されているお二人にお話を伺いました。話しにくい内容もあったかもしれませんが、本音のお話を聞かせていただきました。たしかに案件をこなすことによる経験値向上というのはたくさんの案件を受けている事務所に勤務するメリットですよね。また代表者や一緒に働く仲間とのよい関係というのも、充実した勤務司法書士生活を続けていくための大事な要素なのでしょうね。今回は法人勤務のお話でしたが、次回は個人事務所に勤務されている方にお話を伺いたいと思います。
  • インタビュー②
  •  個人事務所勤務
  • 「個人事務所は所長の人柄が一番! 」
  • 地域に根付いて長く愛されているとある個人事務所。
    そこに勤務されている2名の資格者に事務所のいいところや
    大変なところなどいろいろお話いただきました。
  • 地方都市の個人事務所に勤務されているAさん(勤務9年)とBさん(勤務5年)に、いまの勤務先を選んだ理由や独立開業に対する考えなど「勤務司法書士」についていろいろ伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
  • Aさん
  • Bさん
  • よろしくお願いいたします。
     
  • ではまず初めに、お二人がいまの事務所に勤務されたきっかけを教えてください。
  • Aさん
  • 最初は他県の違う事務所に勤務していたんですけど、そこはあまり自分に合わなかったんです。それで他にどこか勤められるところはないか探していたんですが、同期の司法書士が勤めているところに誘われて。その同期はそのあと5年くらい勤めて出産で退職したんです。私も出産で1年半ほど育児休暇を頂いたんですが、そのあともこうやってお仕事させてもらってます。
  • Bさん
  • 私は司法書士会に履歴書登録したら一番に連絡がきたのが今の所長だったんです。面接に行ってみたら雰囲気が独特な事務所って感じで、「あ、いいな」って。あと新人研修のときに講師の方がポロっと「いわゆるブラック事務所っていうのが存在するから気を付けて就職してね」と言われてたのが印象的だったのですが、所長がそのとき県の副会長をされていたので、絶対にブラックではないなと(笑)で、お願いしますと入所しました。
     
  • 同じ事務所にAさんが育児休暇を含めて11年、Bさんが5年と結構長いですよね。それだけ続くいまの事務所の魅力ってなんですか?
  • Aさん
  • そうですね。まずやめる理由が見つからないです。前に私が初めて勤めた事務所はどんどん人が入れ替わる事務所だったんです。さっきのブラック事務所じゃないですけど残業代なしで23時くらいまで残業せざるをえない状況だったり、収入印紙を1円でも安いところを探して自分のお金で立て替えて買わされたり(泣)。そういうのを経験してるからかもしれませんが、いまはしんどいとかつらいっていうのが全然ないんです。あと、ここの事務所って色々な仕事に関われるんです。大きな事務所だと不動産登記に特化してて決済ばかりとか、いまは少ないかもしれないですけど債務整理だけやってるとか、結構偏った仕事になるケースもあるかと思うんです。でもここでは様々な種類の仕事の依頼があって、所長から最初に概要の説明を受けたら、あとは案件を最初から最後まで任せてもらえるんですよ。任されるっていっても随時所長にも相談できますし、事務所に本が大量にあるので分からないことがあってもすごく調べやすいんですね。所長も仕事に必要なモノは投資を惜しまない方なのでソフトとか本とかでも私たちから勧めたら必ず検討して買ってきていいよと言ってくれる。あと、前の事務所では忙しいからという理由で研修にもなかなか行けなかったんですけど、ここでは快く行かせてくれて。司法書士としての経験や勉強という意味では申し分ない環境にいられてると思います。
  • Bさん
  • わたしもAさんと同じでいろんな仕事ができるっていうのと、人間関係に悩んだことがないっていうのがあります。他の事務所に勤めている同期や会社に勤めている友人に話を聞くと、職場の人間関係に結構悩んでいる人が多いんですけど、それに関しては全くないんです。本当に事務所のみなさんが親切にしてくださって、家族のようなアットホームな雰囲気なんです。何か分からないことがあってみなさんに質問しても、忙しいのにも関わらず嫌な顔ひとつせずに一緒に考えてくれたり教えてくれるんですよ。こういう雰囲気って少人数だからこそのメリットなんでしょうね。 あとは残業がまったくないんです。私がしてないだけかもしれないですけど(汗) 事務所の定時が5時30分なんですけど33分発のバスに乗って帰るんです。前に5分ぐらい残ってたときに所長に大丈夫?って言われるくらいで。「仕事大変だったら他に回すから言ってね」って気を掛けていただいたりして。
     
  • お話を伺うだけで所長のお人柄がよく伝わりますね。ここまで事務所のいい話ばかり伺いましたが、逆にちょっと大変だなと思うところはありませんか?
  • Aさん
  • 大体の個人事務所がそうなのかもしれないですけど、法人事務所と違ってきっちりと就業規則が定められてるわけでもないですし、先生の裁量で判断される部分があるんです。たとえば有給制度ってありますけど、私が入所したときは有給の管理はされていなかったんです。もちろん所長は「用事があったらいつでも休んでいいよ」って言ってくれるんですけど、いつでもいいよって言われても、なかなかみんな休みづらい部分があるんですよね。有給として管理をしてもらったほうが休みやすいと思って、差し出がましいんですけど、有給管理表と有給申請書を作って、有休を取得したいときは先生にハンコをもらって管理するのはいかがでしょう。って聞いたらすぐに受け入れてくれて。あと前に忙しくて1時間くらい残業をしていた時期もあったんですけど、所長から「最近忙しかったら今月多めに付けといたよ」って言っていただけて、気持ちはすごくありがたかったんです。でももし先生の気付かないところで残業してる人とかがいたら、ちょっと不遇な感じがして。残業したら残業管理表につけて先生に確認してもらうようにしたらどうでしょうって提案したら採用してくれました。いい意味でも悪い意味でも所長がみんなを極力管理しないというのが少し気になる事もありますが提案すれば検討してくれるっていうのは所長の器の大きさを感じます。
  • Bさん
  • 強いて言うとすれば、将来のことを考えると社会保険や年金ですかね。あとは、少人数でやっている分、有給などお休みをいただく日や勤務中の外出時間などが他の人と被らないように調整する必要があったりとやり繰りが必要になります。もちろんどこも同じなんでしょうけど大きいところに比べて融通が利かせづらいのかもしれません。少人数ならではのあるあるですね。
     
  • なるほど。個人事務所ならではの悩みというのもあるんですね。
  • Aさん
  • Bさん
  • 悩みってほどではないです!強いて言えばです(笑)
     
  • それでは、さらに聞きづらい質問です。正直独立についてどう考えてますか?
  • Aさん
  • 私は平成16年合格なので同期はかなりの割合で独立してるんですね。あとは退職したりする人もいてまだ勤務してる人って少ないんですけど、同期の人が次々に開業していって自分の名前で仕事をしていってるのをちょっとうらやましく感じてたんです。なんかりっぱな事務所、きれいな事務所を構えてお花をいっぱい並べてて。当時は過払い金ブームだったんですけど、独立した人たちはすごい収入がよくて豪遊してる話も聞いてたんで、「いいな~~」って正直思いましたね。でも今の時期、軌道に乗せるのも大変だし、本気でやるとなると土日も夜もないくらいにすごく忙しくなると思うんですね。うちはまだ子供が小さいし、融通を利かせてもらえるこの事務所で安定した収入を頂けるっていうのは一番ありがたいんです。将来的な話は別としても、いまの自分が置かれている状況で独立は考えられないっていうのが正直なところですね。あと所長からは自分の名前でやりたかったらやってもいいよって言ってもらえてるので、後見業務とかは自分の名前でやってるんです。そういう自分の名前でやるっていうやりがいみたいなものは少しは味わわせてもらってるんで、すごく満足してます。
  • Bさん
  • 司法書士試験に合格して研修受けて、そのときはみんな独立を夢見て歩んでたと思うんです。でも実際働いてみて、自分で全部を判断できないっていうのが多いので、やっぱり経験も知識もまだまだかなと。いまのところはとりあえず経験と知識をもっと積んでいって、一人で判断できるようになったらそのとき考えるかなって感じですね。ですので今は独立について考えたことはないです。
     
  • 正直にお答えいただきありがとうございます。それでは最後に勤務先を探している方へお二人からアドバイスをお願いします。
  • Aさん
  • 個人事務所は所長の人柄によるところが大きいと思います。面接を受けるときって相手が選ぶ立場ではあるものの、こちらが選ぶんだという気持ちで気になることがあったらちゃんとその場で聞いて、納得がいく事務所に決められたほうがいいと思います。前の事務所のときの話ですが、当時は子供はいなかったんですけど結婚していたので、できれば20時までには帰れるようにして欲しいって面接で伝えてたんです。そのときの返事が結構曖昧だったんですよね。でもちゃんと伝えたんだしきっとそうしてもらえるだろうと性善説で解釈して入所したら全く違ったんです。譲れない部分って誰にでもあると思うんですけど、そこをきちんと確認して入らないといけないって痛感しました。あとはどういう事務所で仕事をしたいのかっていうのを考えておいたほうがいいですね。たとえば長く続けられる事務所を探すんだったら入れ替わりの激しい事務所は避けたほうがいいでしょうし。給与面や規模だけに囚われずに事務所の雰囲気やそこの先生としっかり話をして納得のいく事務所を見つけて欲しいですね。
     
  • Bさん
  • わたしは今の話と逆かもしれないんですけど、司法書士っていう資格を持ってるのはすごい強みだと思うんです。一般企業の就活って、基本的にはずっと働ける企業を探すと思うんですけど、司法書士のような資格者はそういうわけでもないのかなって思うんです。だから入ってみていやだったら辞めるっていうのも一つの方法ではないでしょうか。私の同期もみんな結構転々としてて、同じところにずっと勤務しているのって少数派で。そういう意味では、そんなにビクビクしなくても本当に嫌だったら辞めて、自分に合う事務所を見つけたらいいんじゃないかなと思います。もちろん一番自分に合うところに最初から入るのがいいんですけど、ステップアップしながらよりよい事務所を見つけてもいいのかなと思います。
     
  • インタビュー③
  •  事務所勤務を経て開業
  • 「自分の目的を叶えられる勤務先を探そう」
  • 今回は11年の勤務経験を経て最近独立開業した先生。
    勤務時代のことを振り返って、どんな勤務経験が開業に活かされたのか、
    勤務中の失敗談も含めてお話しいただきました。
  • 先生は勤務司法書士としてどのくらい働いていたましたか?
  • 私が合格したのは大学を卒業した年だったんですが、すぐに司法書士事務所に勤務したわけでなく、1年だけ弁護士を目指したんです。ただ、資格試験ってかなり危険で、のめりこむとキリがないんで1回だけって自分で決めて。で結局ダメで1年後に東京のA事務所に入りました。そこで5年ほど勤務してから、B事務所で1年、C事務所で5年勤めて開業という流れです。開業まで3か所の事務所で計11年勤務したことになります。
  • 最初に勤務されたA事務所について教えてください。どうしてそのA事務所を勤務先として選んだんですか?
  • そこは個人事務所なんですが、そのエリアではかなり有名な事務所だったんです。地域に根付いた事務所っていう感じで。もともと色んな業務を覚えたいっていうのがあったので、特定の業務に特化しているところではないっていう点に惹かれて入りました。
  • 今だから思う、A事務所に勤務していてよかったと思う点はありますか?
  • 今でもその事務所とは付き合いがあるんですが、本当にお世話になったんです。社会人経験がない私に、社会人とは何か、司法書士とはどうあるべきか、というところから学ばせてもらいました。もともと学生時代のバイトもピザのデリバリーとかイベントの設営などをしていたので、接客業というか、お客さんときちんとやり取りするような経験があまりなかったんです。でもここの事務所で名刺の渡し方や電話の出方みたいな基本中の基本から教えてもらって、さらに司法書士としての営業の仕方だったり会社社長との話し方みたいな、そこの先生のノウハウも全部教えてもらえて。これは開業した今、本当に役に立ってます。
  • 社会人として、司法書士としての今の先生の骨組みを学んだんですね。ではその次のB事務所についてはいかがでしたか。
  • B事務所に移ったのは商業登記について修行したかったからなんです。もちろんA事務所でも商業案件はあったんですけど、いろんな事案に携わりたくて移りました。そこも個人事務所で少数精鋭なんですけど、一部上場から中小企業まで様々な会社と付き合いがあって、勉強になりましたね。商業は会社ごとに本当に様々なケースの案件があって、思っていた通りの修行ができました。
  • では、最後に勤めたC事務所についてはいかがでしたか。
  • C事務所は勤務途中で法人化した事務所なんですが、渉外案件が多い事務所だったんです。そこに入所したのはもちろん渉外案件について学べるっていうのもありましたけど、自分が開業しようとしている地元のエリアと近いっていうのが一番でしたね。あわよくば人脈をそこで作って開業しようと。でも結局できた人脈は都内の中心部の人たちばっかりだったので私も都内の中心部に開業しちゃいましたけど(笑)
  • 渉外とはまたちょっと特殊ですね。
  • そこは台湾系や中国系の仕事がかなり多かったんですが、開業した今では事務所のひとつの売りとしてます。でも私、日本語以外まったく語学が出来ないんですよ。ただ漢字圏の国だったらなんとなくフィーリングでいけます(笑)まぁ仲介業者さんが通訳の方を連れてきてくれるんで、それでも全然問題ないですけどね。日本語がまったく喋れない海外の方から相談があったら、丁重に対応できる方をご紹介します。
  • ちょっと話は戻りますけど、勤務中に築いた人脈は開業後にそのまま引き継げたんですか?
  • そこの先生が本当に寛大で、自分で見つけたお客さんはそのまま持って行っていいよと。ですから開業しても変わらない感じで仕事ができています。他の司法書士の話では、一切そういうのは許されない事務所もあるって聞くんですけど、そういう意味でもすごく恵まれたところで勤務できましたね。こうやって改めて自分の勤務時代の話をして思い返すと、どこの勤務先でもいい先生の下で働けたんだなって思います。
  • 正直、相当恵まれてると思います(笑)それでは逆に勤務時代につらかったことはありませんか?
  • うーん。先ほどお話したように先生に恵まれたんで、何も思いつかないですね。もちろん大変な仕事はいっぱいありますし思うようにいかないこともありますけど、深夜労働とかもないですし、無理な休日出勤もなかったですしね。人によっては飛び込み営業がつらいっていう人もいるみたいですけど、それぞれの先生みんな営業が大好きで、そういうのを見て育ったんでそれを苦労とも思わなかったですね。
  • 恵まれすぎです!では勤務時代の失敗談はありますか?
  • 失敗というか、決済に行けなかったことがありましたね。決済場所の銀行に向かう途中に急に倒れて、そのまま頭を打って意識を失くして救急車で運ばれたんです。決済時間になっても私が来ないっていうので事務所に連絡があったんですけど、間に合わず立会できなくて。金融機関に土下座に近いような感じで謝りました。そこの仲介業者からも仕事が来なくなりましたね。自分ではどうしようもなかったとはいえ、先方にも事務所にも本当に申し訳ないことをしました。
  • ちょっと話題を変えましょうか(汗)。同期の先生と自分の勤務先の話をしたりすると思いますが、他の事務所の話を聞いてどう思いました?
  • 債務整理やマンションばっかりやってる事務所勤務の同期達からは、あまりいい話は聞かないですね。もちろんそういうところでもいい事務所もあると思うんですけど、特定の業務に特化している事務所だけにいるとあまり修行にはならないみたいです。ただ、そういうところは給料が結構いいみたいで納得して勤めてる同期もいますし、人それぞれなんでしょうね。でも隣の芝生は青く見えるのか、飲みに行くとだいたい勤め先の愚痴は出てきます。ここだけの話、私自身は全然不満はなかったんですけど、周りに合わせてニコニコ聞いていました(笑)
  • これまで勤務時代のいいお話をいろいろ伺いましたが、それ以外に勤務司法書士のいいところってありますか?
  • 仲間が増えるってところでしょうか。正直、司法書士って横のつながりがそんなにないと思うんです。会の役員とかしていれば別かもしれませんが、司法書士同士協力することはあっても、なかなか心の底から仲間って言いづらいというか。やっぱり同じ事務所で苦楽を共にして芽生えた仲間意識ってすごく強いと思うんですね。いまでもC事務所の現メンバーとOB・OGが集まったC会っていうのを定期的に開いて、情報交換したり近況報告したりしてるんですけど、すごく励みになりますよね。
  • それでは11年の勤務経験にピリオドを打った時の話を伺います。独立開業に踏み切ったきっかけはあったんですか?
  • もうそろそろ独立しなきゃなって思い立ったのがきっかけですかね。何かあってというよりは勤務も潮時かなと。勤めてると給料にも限界がありますしね。そもそも最後にいた事務所の先生が、チャンスがあったら早く独立しろっていうスタンスだったんです。だから辞めるときも「そろそろ独立します」って世間話の延長で話しました。もちろん急に辞めたら迷惑掛かるんで半年くらい前に言って引継ぎしてって感じです。その先生も事務所で人が減ったら大変になるのは目に見えてるのに、「頑張れよ」って快く送り出してくれました。そういう先生の事務所だからこそさっきお話したC会みたいなのが続いているのかもしれませんね。
  • 先生も開業してもうすぐ1年ですか。振り返ってどうです?収入は増えました?
  • すごい直球ですね(笑)。一人でやってる分、正直あまり細かく管理していないのですが、口座のお金は増えているので、収入も増えてると思います。自分のライフスタイルに合わせて仕事ができるので、いまはとても楽しいですね。これも勤務時代にいろいろ経験させてもらえたからだと思ってます。歴代の先生には本当に感謝してます。
  • それでは最後に、これから勤務先を探している人、勤務中の人にアドバイスをお願いします。
  • もちろん私個人の考えですが、勤務先を選ぶ際に自分が何のために勤務するのかという目的をきちんと決めたうえで選んだ方がいいと思います。私の場合は色んな業務に携わりたいというところから始まって、自分の足りない部分を補って、売りを見つけてという感じでしたし。ただ私は独身だったので気にしなかったのですが、福利厚生とかを考えるなら法人に絞るのも一つの手ですし、修行とかを考えずにお金を稼ぐというのであれば、一般企業に勤めるのもアリじゃないでしょうか。でも一番はやっぱり自分に合うかどうかですよね。どれだけいい事務所と言われていても、人と人との関係なので、合う合わないはあると思います。何度も言うようですが、私は本当に先生に恵まれました。そう思えるのは私とその事務所が合っていたからだと思います。ぜひ自分の目的が叶えられる自分にあった事務所と巡り合えるよう頑張ってください!
  • インタビュー④は準備中です


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