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司法書士のいま

～司法書士の最前線を取材しました～

商業登記のスペシャリストが語る
－成功している人と反対のことをやった結果、仕事の川上に立つことができた－

• 司法書士 泉水 悟 先生
• 泉水司法書士事務所 [兵庫県神戸市]
• プロフィール
• 昭和63年司法書士試験合格 / 平成元年1月大阪会登録 / 平成14年7月兵庫県会へ登録移転
  簡易裁判所訴訟代理関係業務(司法書士法第3条第2項第2号)認定司法書士
• 主な会務経歴
• 元 日本司法書士会連合会 代議員
  元 近畿司法書士会連合会 常任理事(広報部長) / 元 兵庫県司法書士会 常任理事(企画研究部長)
• 
• HP:http://www.sensui.info/

• 商業登記
• 仕事のとり方
• 仕事のつながり

• －本ですか？
  
  　もちろん売るためではなくて自分の整理用です。でもね、そうやって体系的に作ることによって頭の中がきちんと整理されます。ちょっと特殊な事例でも体系立てて考えることができるので、市販の本に載っていないような事例をこなすことができるようになったと思います。
  
  ―商業登記に泉水先生ありというのはそうして生まれたのですね
  
  　時期もよかったと思います。たとえば平成13年に金庫株解禁等に伴う商法改正というのがあったのですが、これがいまの会社法へ向かう元になったような改正で、自己株式の取得の関係とか大きく変わった時期がありました。それだけの大きな改正でしたので、当時商業登記で有名だった先生方も一から勉強をしなければならなかった。過去の書式は使えないし、まだ書籍もそんなに出ていないという状態でしたからね。ただ私は知識ゼロの状態で実務をしながら司法書士の勉強を独学で行っていたので、既存の法律も法律の改正も新しい法律も私にとってはどれも一緒だったんです。だから大きな法律改正があってもいつも通り新しいことを考えるというだけで普通に取り組めたと思います。
  
  　そんな状態でしたから、研修会などで講師役をしたあとは講習を受けられた先生からの質問の電話が朝からすごかったですね。当時は共同事務所で、そのような電話が続くと迷惑にもなり、諸事情もあって登録を大阪から兵庫に移しました。その頃は一般の方から司法書士会に相談があっても、改正後まもない複雑な商業登記は誰もやりたがらない。特に気にせず商業登記を受けてくれる。そんな司法書士もいるよって、色々な方々が私を紹介してくれて、一人で仕事をするには足りる程度の分量の依頼がくるようにはなりました。だから私が受ける仕事は他の人があまりやらないような特殊な仕事の比率も高くなっています
  
  ―先生が思う商業登記とは
  
  　商業登記はね、おもしろい。
  　本気でかかわると同じ仕事なんてまずないです。もちろん、不動産も関係者がその都度変わるので同じではないですけど、商業は会社ごとに中身が全然違うので、同じような登記だとしても内容は全然違います。その証拠に私が作る議事録はひな型をその都度修正するスタイルとなります。同じ会社の議事録でも、依頼の度に前回とは何等かの違いがでてきます。会社も生き物なので何も変わらないということは通常ないはずです。そうであれば、何がどう変わったのかという点にも注意して、その会社がなぜ、この度その登記手続（内容）を選ばないといけないかということを意識し、ストーリー性のあるオリジナルティー溢れる議事録の作成となるよう努めています。
  
  　前に実際にあった話なのですが、あるグループ会社のいずれもが役員変更登記を怠り、休眠会社のみなし解散による整理についての通知をうけ、それに伴って登記を申請することになり、これを受任しました。グループ会社全社にこの通知があって、同時期に登記申請を行ったのに過料通知が届いたのは１社のみでした。もし過料が全社に掛かったらすごい金額になったはすです。過料というのは正当な事由があれば減額されたり対象から外れたりするので、その時の議事録には手続き的にできなかった理由やこういう事情で総会がどうしても開けなかったということをきちんと入れておいたのです。もちろんそれは嘘ではなくて聞き取りの中から生まれた文章ですよ。あとはテクニックの話で、読んでくれる議事録の書き方をするというのがポイントです。グループ会社の場合、今から思えば１社のみ代表取締役が異なっていました。少なくとも、その会社については正当事由がないとの判断だったのかもです。しかし、これもきちんと読んでもらえての結果だと思います。法務局も調査しにくい書き方や整理のされていない添付書面の綴じかたでは調査しにくいですよね。どう書けば読んでもらえるのか、どうかけば登記すべき事項が見やすいのか、調査する立場の方がどう感じるのか、実験するかのように色々工夫しながら登記申請しています。
  
  　でもね、過料については稀にうまくいったというだけであって、必ず過料が掛からなくなるなんてことはありません。さきほどのグループ会社からこの話を聞いた同業種の人が１０人くらい来て、「先生に頼んだら過料が掛からなくできるって聞いた」って。そんなことあるわけないですよね。
  
  　こういうところも司法書士の腕の見せどころですよね。ありきたりの定型だけではないというのも商業登記のおもしろい部分だと思います。